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前作『Milk』から6年ぶりの、そしてKlan AileenからZamboaへと改名後初のアルバム『未来』
「都会」を離れ、「郊外」をさらに離れ、明確に「田園」的な音楽を作ることをテーマに、自然の静けさや、長閑さ、何かが「息をひそめている」ような「予感」そのものを音楽に落とし込むことを試みた、彼らのディスコグラフィーの中でも最も凶暴なアルバムが誕生した。
2019年以降に行った全てのリハーサルに録音機材を持ち込み、サウンドチェックを含めた「全てを録音する」という途方もない制作方法をとったこの作品は、いわゆる「本番」的な気負いによって音楽から失われていた「リラックスした演奏のタッチ」「大胆さ」「無計画さ」を、テンポの変化や揺れ、演奏ミスやアクシデント、環境ノイズ等のさまざまな形で捉え、それをアナログテープとミキシングコンソールを使ってミックスすることにより、再現不可能な「記録」としての迫力と緊張感を携えている。グリッドや強弱の連続性への疑問を持たないDTMミュージックは当然のこと、昨今のロックミュージックで主流になりつつあるエミュレートされたアナログ感とも一線を画すような生々しい音像は聴き手に否応なく演奏者の身体を幻視させる。
彼らの個性の一つである、1コードの、下方向への強い磁力を持った地縛的なギターは影を潜め、代わりにメロディックマイナーを基調とした(彼らにしては)多彩なコード展開の中に、かつての姿を表しながら不和と調和を往き来する。澁谷亮の透明度の高い歌声による幽暗なメロディと、竹山隆大の、日本民謡とバックビートの中間にある、ロックともジャズともつかない極めて個性的なビートが合わさることによって「精神のダンスミュージック」が立ち上がってくる。
量子力学の二重スリット実験から着想を得たというジャケットデザインは、青海波や音の反響を思わせる模様の中央に、消失点に見立てられる形で新たなバンド名である「ザボン」の実のシルエットが配置されている。光り輝く一つの点=「正解」へと向かわない無数の可能性が、間違いにも正解にもならず、可能性のままこだましている様子は、まさにこのアルバムが発する言外のメッセージを表象していると言える。
今作の大きな特徴である「歌」と「言葉」はサウンドスケープの最前面に堂々と配置され、それは過去作の特徴でもあった「奥まったボーカル」に対して真逆のアプローチである。
全ての言葉が聴き取れてもなお、どこかに結実しないまま、深く潜る感覚と空へと霧散するような相反する感覚を呼びながら、我々を過去へと押し流し未来へと引き寄せていく。
録音、ミックス、LP用のマスタリングを澁谷が、CD・デジタル用のマスタリングを君島結が担当している。
重さ | 該当なし |
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サイズ | 該当なし |
フォーマット | LP, CD, Cassette, Download |